歌野晶午さんは、ハッピーエンドにさよならをしました…
こんにちは。
もちこ。です。
今回は歌野晶午さん著「ハッピーエンドにさよならを」について紹介していきたいと思います。
あらかじめ注意しておきます。
この本、短編集なんですが本当にひとかけらもハッピーエンドないです。
というか、全編通して救いがないです。
それを踏まえた上で色んなバッドエンドが読みたい方は続きをどうぞ!
【目次】
- あらすじ
- 【おねえちゃん】
- 【サクラチル】
- 【天国の兄に一筆啓上】
- 【消された15番】
- 【死面】
- 【防疫】
- 【玉川上死】
- 【殺人休暇】
- 【永遠の契り】
- 【In the lap of the mother】
- 【尊厳、死】
- まとめ
あらすじ
史上初、本格ミステリ大賞2度受賞の偉才が紡ぐ衝撃の結末!
望みどおりの結末なんて、現実ではめったにないと思いませんか? もちろん物語だって……偉才のミステリ作家が仕掛けるブラックユーモアと企みに満ちた奇想天外のアンチ・ハッピーエンドストーリー!
ーAmazonより引用
短編集なのでさくさく読めますが、内容が内容なので、ちょっとグロッキーになる方もいらっしゃるかもしれません。
ハッピーエンドに食傷気味の方におすすめしたい一冊。バッドエンド揃ってますよ!
以下、少しネタバレ含みます。
【おねえちゃん】
両親に対して間違った解釈をしてしまった娘は、ある悲劇を生んでしまう…。
愛はあるのに不器用な両親が、子どもと向き合うタイミング逃したらこんなにすれ違うものなんだな…その事情知ってる叔母さんも一生背負うんだろうなと思うと、なんともいたたまれないお話でした。
【サクラチル】
受験のお話。なんですが、最後にとんでもないどんでん返しがありました。
酒に溺れてDVに走ってしまう旦那と、浪人生の息子を抱える女性。この設定だけでまずつらい。息子が少しでも救いになると思ってたんですけどね…。
(親子ってやっぱり似てしまうものなのかなぁって)
【天国の兄に一筆啓上】
2ページでバッドエンドって凄すぎないですか!?
タイトル通り弟から兄へのお手紙です。死んだ兄が浮かばれないよう…つらい。
【消された15番】
甲子園を目指した少年とその母親のお話。
少年はレギュラーになれなくてもベンチ入りして、「この本にも救いがあるじゃない!」
…なんていう展開はなく。
甲子園行った息子以外のところで事件が起こって、暴走してしまった母親が幸せな結末を自分から手放してしまいました…。
【死面】
やっぱり「入るな」とか「やるな」って言われると、人は行動してしまうものなんですね。
入ったらいけない部屋に自棄になって入ってしまった少年の自業自得エンドなのか、呪われエンドなのか微妙なラインですが、好奇心もほどほどに。
【防疫】
幼稚園からの受験を娘に過剰に強いる母親のお話。もはやDV。
期待を一身に受け、挫折を繰り返し、その期待が突然無くなったとき、自分ならどういう行動を取ってしまうだろうかって思いました。病むかグレそう。
個人的にはこの章が一番読むの辛かったです。
受験生だったり、読んでて辛くなってきたときは無理しないほうが良いかも。
【玉川上死】
よくある高校生の悪ノリが、行き過ぎてしまった結果引き起こした事件。
本人たちは楽しんでるつもりかもしれないけど、周りは迷惑だと思っていたり、いじりといじめは違うよね…と改めて思わざるを得ない。
【殺人休暇】
主人公がある男性に異様に気に入られ、ストーカーされてどんどん精神が追い込まれていく描写がなんとも生々しい。純粋に男性の行動が気持ち悪かったです。
タイトルがタイトルなだけに今回は結末読めた!と思っていたのですが、見事に外れました!
【永遠の契り】
熱々カップルの誕生か!?いやでも今までの流れからすると、裏があるんじゃないの…?
って思ったんですが、裏はなかったです。
が、熱々になる前にちょっと冷静になってたらよかったね…っていう感じのお話でした。
ある意味これが唯一のハッピーエンド感はありました。ハッピーじゃないけど。
【In the lap of the mother】
in the lap of the godsだと「人力の及ばない」「神のみぞ知る」「運次第」っていう意味があるようですが、となるとタイトルの意味は「母の及ばない」「母次第」って感じの意味なのでしょうか?
とりあえず何かにのめりこみすぎてはいけないっていう教訓が私の中で構築されました。
「防疫」もそうだけど、毒親が題材になるのはなかなかメンタルに来ます。
【尊厳、死】
頭の中で主人公のホームレス像を勝手に作ってしまった私も、見て見ぬふりしている人や、無理にでも(主人公の意思関係なく)救ってあげようとしていた女性と同類なのかもしれないと反省しました。価値観の押しつけは良くないですね。結末は衝撃的でした。
まとめ
以上、歌野晶午さんの「ハッピーエンドにさよならを」のレビューでした。
この本は、以下の方におすすめです。
- ハッピーエンドに食傷気味の方
- 短編集が好きな方
- イヤミスを味わいたい方
- 感傷的になりすぎない方
- 差別表現・虐待表現を読んでも平気な方
イヤミスは大丈夫なのですが、虐待表現が得意ではないので、正直私は読んでいてつらくなる場面が多々ありました。
でも、想像がつかないラストがある章もあり純粋にミステリー短編集として楽しめる一冊だと思うので、精神的に安定しているときに一読してみてはいかがでしょうか?
今回はややヘビー「いけないⅡ 道尾秀介(著)」
こんにちは。
もちこ。です。
今回は以前紹介しました道尾秀介さんの「いけない」の第二巻!
「いけないⅡ」の紹介をしていきます。
今回も前回同様ネタバレはできるだけなしでレビューしていきます。第二巻の内容はちょっとヘビーです!
第一巻の記事はこちら↓
あらすじ
大きな話題を読んだ”体験型ミステリー”第2弾。
第一章「明神の滝に祈ってはいけない」
桃花はひとり明神の滝に向かっていた。一年前に忽然と姿を消した姉・緋里花のSNS裏アカウントを、昨晩見つけたためだ。失踪する直前の投稿を見た桃花には、あの日、大切にしていた「てりべあ先生」を連れて姉が明神の滝に願い事をしに行ったとしか思えない。手がかりを求めて向かった観瀑台で桃花が出合ったのは、滝の伝説を知る人物だった。
第二章「首なし男を助けてはいけない」
夏祭りの日、少年は二人の仲間を連れて大好きな伯父さんを訪ねる。今夜、親たちに内緒で行う肝試し、その言い出しっぺであるタニユウに「どっきり」を仕掛けるため、伯父さんに協力してもらうのだ。伯父さんは三十年近くも自室にひきこもって、奇妙な「首吊り人形」を作っている。その人形を借りて、タニユウの作り話に出てきたバケモノを出現させようというのだ。
第三章「その映像を調べてはいけない」
「昨夜……息子を殺しまして」。年老いた容疑者の自白によれば、息子の暴力に耐えかねて相手を刺し殺し、遺体を橋の上から川に流したという。だが、その遺体がどこにも見つからない。必死で捜索をつづける隈島刑事は、やがてある「決定的な映像」へとたどり着く。彼は先輩刑事とともに映像を分析しはじめ――しかし、それが刑事たちの運命を大きく変えていく。
そして、書き下ろしの終章「祈りの声を繋いではいけない」
――すべての謎がつながっていく。前作を凌ぐ、驚愕のラストが待つ!
各話の最終ページにしかけられたトリックも、いよいよ鮮やかです。ーAmazonより引用
レビュー
今回も章の最後の写真でゾワッと…
来たのは、私は第二章ぐらいですかね。第二章の写真に関してはちょっと閲覧注意のレベル。だってもろ○○なんだもの…(あえて伏字にさせていただきます)
他の章の写真は正直なんでこの写真が?っていう感じなのですが、今回は次の章に答えのようなものが書かれているので、謎解きとしては「いけない」一巻よりだいぶ難易度は下がっています。
ある程度はっきりしたミステリーを読みたい方は「いけないⅡ」のほうがおすすめ。
しかし、その代わりなんですが、一巻よりも描写も心理的にもキツイ…。
救われている人がいない、重めの作品になっています。
各章の主人公に感情移入してしまうと精神的にしんどくなってしまうと思いますのでご注意を。
第一巻と繋がりのある人物が一人登場します。
前回登場した「隈島刑事」です。
「署内でクマの手とからかわれる」との内容で、最初は同一人物か?
と、思ったのですが年齢が30前後の新人刑事。兄は数年前に殉職した、との記載があるので、前作の隈島刑事の弟…?
道尾さんの作品は叙述トリックが抜群なので、ここでも騙されている気がしてしょうがないです。
まとめ
以上、道尾秀介さんの「いけないⅡ」のレビューでした。
以下の方におすすめです。
- 前回の「いけない」が好みだった方
- 叙述トリックが好きな方
- 暗めの話が好きな方
- 道尾作品が好きな方
前作よりは内容が暗めですが、難易度は下がっているかと思います。
私はある少年に少し感情移入してしまったので数日グロッキーでした…。
しかし、道尾さんならではの叙述トリックを存分に味わえますので、一読してみてはいかがでしょうか?
ルビンの壺が割れた 宿野かほる(著) ネタバレできない!!
こんにちは。
もちこ。です。
今回は、宿野かほるさんの「ルビンの壺が割れた」をネタバレなしで紹介していきます。なぜネタバレなしかって?
ネタバレすると面白さが半減してしまうから!(自分で解明された後の再読がまた面白い!)
アメトーークの読書芸人の回で紹介があったり、昨年SNS等で「気持ち悪い」「読む手が止まらない」など様々な意見があり話題になったこの一冊。気になったので読んでみることに。
あらすじ
すべては、元恋人への一通のメッセージから始まった。
衝撃の展開が待ち受ける問題作!
「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」
――送信した相手は、かつての恋人。フェイスブックで偶然発見した女性は、大学の演劇部で出会い、二十八年前、結婚を約束した人だった。やがて二人の間でぎこちないやりとりがはじまるが、それは徐々に変容を見せ始め……。
先の読めない展開、待ち受ける驚きのラスト。前代未聞の読書体験で話題を呼んだ、衝撃の問題作!ーAmazonより引用
レビュー
「気持ち悪い」の意味がグロ系だったら嫌だなぁ…って思ってたのですが、グロ系ではなかったことにちょっと安心。
「生理的に無理」の方の気持ち悪さですね。私は「気味悪い」って感じでした。
最初から主人公である水谷一馬は飛ばし気味で「異様さ」を醸し出していきます。
水谷のメッセージ先である未帆子の友人のフェイスブックに載ってる写真拡大して、個人特定とかどこの特定班だよって思いました。(ついでに写真の窓ガラスに映ってるところも解析するというパワープレー)
それから、特に直接的に復縁を迫るメッセージでもないのですが、ところどころに未練というか執念のようなものを感じる内容を婚約破棄してから、なぜか「28年後」に未帆子に送ります。返事は不要と添えつつも、今度は1年後に未帆子のアカウントに投稿された未帆子が書いたであろう絵を引き伸ばしプリントアウトして部屋に飾り、さらに1年後には未帆子の娘の話題にも触れ「自分はガンである」「婚約破棄の瞬間から自分の人生は変わってしまった」などというメッセージが送られます。
これの何が一番怖いって、一度も未帆子から返信が来てないのに3年間送り続けるっていう…しかも悪気が全く見られないっていう…。
「警察は苦手です」っていうのが、重要な伏線になってきます。
私だったら、こんなメッセージ来たら運営に通報だよなぁ…と思う中、未帆子はちゃんと返事しちゃう!なぜ!
そんな未帆子ですが、苗字は頑なに教えようとしません。いや確かにこんな特定班に知られたら自分だけじゃなく家族とかも心配になりますもんね…未帆子、なぜ返信したのか。
と思っていたのですが、最後の最後で未帆子がメッセージをやり取りしていた理由も考察することが可能になります。
二人ともどこか怪しいところがあり、気味悪いと思いつつも展開が気になり読み進めてしまう、この話どうなちゃうの?感が面白い一冊でした。
まとめ
以上、宿野かほるさんの「ルビンの壺が割れた」のレビューでした。
この本の物語の結末は、ネットや人づてではなく、実際に読んだときの方が衝撃度が高いと思うので、ぜひ体験していただきたい一冊になっています。
以下の方におすすめです。
- 一時間くらいでサクッとミステリーが読みたい方
- どんでん返しが好きな方
- ネットで話題になっている本を読んでみたい方
ちなみに、この本を最大限に楽しみたい方は、
- 先にネタバレを見ないこと
- 本のカバー裏を先に見ないこと
- ネタバレ後に再読すること
を、おすすめします。人におすすめするときは「とりあえず読んでみて」としか言えないのがもどかしいところ。
ということで、少しでも気になった方はとりあえず読んでみてください!
2022年→2023年
こんにちは。
もちこ。です。
皆様明けましておめでとうございます!
今年もとりとめもなく色々と書いていこうと思いますので、お付き合いいただければ嬉しいです!
年明け一発目の今回は、読書記録ではなく、今年の抱負を書き連ねてみようかと思います。
ちょっとだけ2022年の振り返りも。
わたしの2022年
まずはやっぱりこれかなと!
本の書評ブログ始めました!
高校・大学あたりに軽くブログのようなものをやっていましたが、ひとつのテーマに絞るような感じではなく、ただ書いては消し書いては消しを繰り返したり、独り言のようなブログを書いていた気がします…ほぼ黒歴史。
書評ブログを始めて「こんなにも本が好きな人がたくさんいるんだな」っていう喜びであったり、「まだ知らない作家さんだ、読んでみたい!」みたいな好奇心が以前よりもグッと湧いてくるようになった気がします。書評ブログ始めてよかった。
それから、本やブログとは全然関係ないのですが…2022年に実は私生活で一大事がありました。
足の怪我ですね。
これ、最初はすぐ治るだろうと甘くみてしまって…3月くらいから痛めているのにまだ治りません…。結局未だに腰が悪いのか、足が悪いのかわからないという。
捻挫とか骨折の類じゃないのにここまで長引くものなのかと、メンタル的にもなかなか辛かった一件でした。
2023年にやりたいこと
2023年も引き続き、いろんな本に触れて、いろんな世界を体験したいなぁと思っています!去年は年間で100冊くらいは読めたと思いますが、今年は…めざせ120冊!
(1か月10冊計算だといけるか…?)
結構ゆっくりな読書ペースなので目標達成できるか怪しいですが、その分しっかり内容を楽しみながら読んでいきたいと思いますので、おすすめ本など気軽に教えていただけたら嬉しいです。
あと、今年はたくさんの方と繋がりたいです!本を介して交流を深めていけたらいいなと思っています。
ブログも更新頻度高めていきたい、無理せずゆっくり、が大前提ではありますが。
そして、本とは全然関係のないもうひとつのやりたいことですが…
そう、弓道!
実は弓道も趣味のひとつでして、ちょこちょこ稽古しております。
2022年は怪我もあり、なかなか稽古に向かうことができなかったのですが、今年は体力作りのためにも稽古頻度を上げていきたいと思っています。(あと痩せたい)
具体的な目標でいうと…昨年の的中率が6~7割だったので、今年は8割ぐらいにはもっていきたいですね。
以上、もちこ。の2022年振り返りと、2023年やりたいことでした。
「無理せず、ゆっくり、健康第一」を大事に、2023年はいろんなことにチャレンジできたらと思っています。
2023年もどうぞよろしくお願いいたします!
*特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」より
2022年!読んでよかった本5選!!
こんにちは。
もちこ。です。
今回は2022年の締め括りとして、2022年約100冊読了した本の中から「この本は読んでよかった!」と思う本を5冊紹介していきます。
2022年に発売した本ではなく、私が読んだ中からの独断と偏見になりますので、あらかじめご了承願います。
もくじ
【お探し物は図書室まで/青山美智子(著)】
青山美智子さんの作品はどの作品もほっこりできてさくさく読める作品が多く、甲乙付け難かったです。
「赤と青とエスキース」「木曜日にはココアを」と悩みに悩みましたが、個人的に一番読みやすかったのと司書さんの個性が印象的で、この作品を選ばさせていただきました。この司書さんが、人生にちょっと困った人の背中を一冊の本と「オマケ」のマスコットで後押ししてくれます。司書さんファンも多いのではないでしょうか。
司書さんが私の中でマツコデラックスさんなんだよなぁ…。映像化する時はぜひキャスティングしてもらいたいです(嫌がりそうですが)
【コンビニ人間/村田紗耶香(著)】
なぜこの本に今まで手を付けて来なかったんだろうと思った一冊。村田さんの世界観は本当にこの人にしか書けないんじゃないかというぐらい独特なので、おそらく好みが真っ二つに割れるだろうなぁと思います。
「コンビニ人間」の主人公は、もしかしたら発達障害の部類なのかなと思ったりもしますが、自分が自分らしくいれるなら周りがとやかく言うことはないし、何か言われても気にしないことが大事なのかもしれないと考えさせられました。職業とか性別で優劣つける周囲の感じとか、家族・友人などの反応がリアルで、表現の仕方や話のテンポも良く読みやすさもあります。
生きづらさを感じている人は一読してみてはいかがでしょうか?
【いけない/道尾秀介(著)】
「どういうこと!?」と何度も立ち止まってしまうのに、続きが気になって読む手を進めざるを得ない、新感覚体験型ミステリーです。道尾さんの文章は伏線がありとあらゆるところに張り巡らされているので、一文でも見逃すと(見逃さなくても)ほぼ騙されます。
章ごとに主人公は変わっていきますが、すべて同じ地域で起こった事件で、どの章も繋がりがあります。しかし、明確な答えは提示されない部分もありますので多少のイヤミス感を含んでいます。
その分「そうだったのか!」がわかると本当にスカッとするので、この感覚はぜひ一度体験していただきたい一冊です。読書会でもおすすめ。読み終えた後に皆さんで考察し合うのも面白いかと思います。
【夜明けのすべて/瀬尾まいこ(著)】
瀬尾まいこさんも青山さんのように読んだ後に心が温かくなるような作品が多く、悩んでいるときや元気が出ないときにおすすめしたい作家さんです。
「夜明けのすべて」ではパニック障害の男性とPMSの女性がそれぞれの病気に向き合っていく様子が描かれています。心苦しく感じるぐらい病気の描写はリアルですが、二人の少しずつの優しさで何かが変わっていくかもしれない…明日は今日より良い日になるかもしれない…そんな希望を持たせてくれる一冊でした。
当事者の方や生きづらさを感じる方におすすめです。
【生欲/朝井リョウ(著)】
これは間違いなく問題作。頭をフル回転して読みました。が、読み終えた後は「今この本に出会って、今この価値観を感じれたこと」が本当に良かったと思っています。
読みやすいかと聞かれると、正直途中で頭がいっぱいいっぱいになってしまい、休みを入れながら読むぐらいの大変さはありました。そのぐらい自分の価値観を力づくでひっくり返された感じ。昨今叫ばれる「多様性」の闇を見た気もしました。
ちなみに私はこの本を読んでから「多様性」を素直に肯定できなくなりました。「共感か否定か」の二択に分かれると思うので、これもぜひ一読いただいて自分はどちらなのかを体験してみてはいかがでしょうか?
稲垣吾郎さんと新垣結衣さんで2023年に映画化されることが決まりましたので、2023年にまた話題になること間違いなしの一冊だと思います。
まとめ
以上、もちこ。が選ぶ「2022年、読んでよかった本5選!」でした。
こうして選んでみると、実は今年発売の本を選んでないんですよね…もしかしたら流行が去ってから読んでみたくなるタイプなのかも…。
しかし、「その年に発売されたものが今の自分にヒットするかはわからない!」これが本の良いところでもあると思うのです。その時の自分が置かれている環境であったり、心情であったりで同じ本でも感じ方が変わるところが本の魅力だなぁと感じます。
さて、2023年の私はどんな本が心に刺さり、どんな感じ方をするのか!?
それも含めて、来年の読書も楽しんでいこうと思います!
うつ病で20代全部詰んでたボクが回復するまでにやったこと デラさん(著) 少しでも生きづらさを感じている方へ
こんにちは。
もちこ。です。
今回は、デラさんの「うつ病で20代全部詰んでたボクが回復するまでにやったこと」について紹介していきます。
現在当事者の方、近くに悩んでいる人がいる方、なんだか最近疲れてきたな…
「自分には関係ない!」と思っている方にも是非一読していただきたい目から鱗必至の一冊です。
文体がライトなので、さくっと読めてしまうところもおすすめ。
あらすじ
うつ病9年目、再発5回。
死にきれなかったボクが
「村人A」として生き直したら
少しずつ元気になった話。
◎うつ当事者による、うつ当事者のための人気連載が書籍化
現在もうつ闘病中のデラさんが、うつの「底」から抜けるためにやったすべてのことを紹介。うつ病はなかなか治らない。だからこそ自分の欠陥を受け入れ、それでもうまいことハックすればどうにか生きていける……というリアルな体験談です。
うつに悩む人の他、予備軍で今なら逆戻り可能な人、うつの周りの人にも役立つ内容。
サンクチュアリ出版のウェブマガジン「ほんよま」人気No.1連載(累計200万PV/7記事・半年間)から初の書籍化。
◎マインド、生活習慣、仕事……村人的「どん底から回復できた工夫」を網羅
自殺未遂で死にきれなかった4年前。まさにうつの底にいたデラさんは、「いったん死んだ自分だから、残りの人生は〝おまけ〟。第2章は主人公じゃなく、サブキャラの村人として生きるか~」と考えてテキトーに生き始めると、「あれ? 第2章、意外と楽しくね? 村人、悪くなくね?」と思えるようになりました。
その頃から現在まで、デラさんがやってみて本当に効果があった、思考法や生活習慣・仕事のコツを教えます。
Contents
【LEVEL1 マインド編】
【LEVEL2 思考編】
【LEVEL3 生活習慣編】
【LEVEL4 人間関係編】
【LEVEL5 仕事編】
ーAmazonから引用
レビュー
この本では、デラさんが実際に行って効果があったものだけを紹介しています。
もちろんすべての当事者の方にヒットする、というわけではないですし、デラさん自身もあくまで「ボクの場合は」というスタンスで書かれています。
例えばLEVEL1マインド編にある、「うつ病前の自分に戻ろうとしない」では、大切なのは「新しい自分をつくりあげていく」ことと記述されています。
確かに、現在自分が40代だとして「よーし、高校生くらいの身体能力を取り戻すぞ!」なんて急にランニングなんか始めたとして。
良くて次の日筋肉痛、最悪怪我や体調不良になって「ランニングなんかするんじゃなっかった…」となるよりは、まずは家の周りをウォーキングから始めて少しずつ距離を伸ばして…のほうがよっぽど建設的だと思います。
心だってきっと同じ原理のはず。
今の自分の状態で、無理なく生きやすい自分を作っていくのが、病気とか関係なく大事なことのように思えました。ほんの少しでも出来たことを褒めていくほうが精神衛生上良いに決まってます。(とはいえ、出来なかったこと・失敗したことのほうに目が向きがちなのが辛いところですよね…)
LEVEL5まである章のうち、個人的に一番印象深かったのが、LEVEL3の「生活習慣編」でした。
なにを隠そう私自身が極度の心配性であり、度々不眠に悩まされる体質なのです。
5人に1人の割合で悩まされるこの不眠症。
大事な用事の前日にほぼ眠れず、次の日辛いまま一日を過ごす…というのは私だけではないはず。
そこで著者であるデラさんの信条は「眠れないなら起きていればいい」というものでした。た、確かに~!?
私自身、早寝早起きが体に良い、太陽の光でセロトニンが~とか良く聞くせいか、「そうしなければならない」っていう自分への勝手な追い込みをしていたように感じました。で、実際にちょっと試してみたんですよね。
「今までほぼ眠れずに次の日を迎えてなんとかなっていたし、眠くなったら寝ることにしよう!」って。
…なんだか前より寝付きが良くなったような、というか寝れてるし、すっきりもしている!!
私にはデラさん法が合っているようですね。
他にも「自分のためだけの選択をしてみる」や「食いたいものを食う」、「思ったこと口に出す」など、「このぐらいだったら自分でもできるかな…」と思える項目がたくさんあるので、気楽に読み進めていけるポイントだと思います。
重要なのはいろいろ試せそうなところから試して、自分が自分らしくいれる環境や習慣を見つけること。自分に合わないものはやっても自分が辛いだけだからやらないほうに極力持っていくこと、ですね。
まとめ
以上、デラさんの「うつ病で20代全部詰んでたボクが回復するまでにやったこと」のレビューでした。
今回は作者様の負担にならないためにも評価はつけませんが、少しでも生きづらさを感じている方にもためになることがたくさん書いてあるので、たくさんの人におすすめしたい一冊です。
以下の方におすすめです。
- うつ当事者、または悩みを抱えている知り合いがいらっしゃる方
- 少しでも生きづらさを抱えていらっしゃる方
- 最近色々なことに疲れを感じてきた方
- ネガティブ思考に陥りやすい方
何かで悩んだときは「デラさん思考」を思い出して自分らしさを大事にしていこうと思います!
いけない 道尾秀介(著)は本当に「いけない」(いい意味で)
こんにちは。
もちこ。です。
今回は、道尾秀介さん著「いけない」について紹介します。
題名からして「いけない」って言われると、やりたくなるのが人の性というもの。
ピンクのゾウを絶対に想像しないでください、絶対に!!
…と、言われれば言われるほど想像してしまう例のヤツ(カリギュラ効果と呼ばれるそうです)ですね。
あらすじ
第1章「弓投げの崖を見てはいけない」
自殺の名所付近のトンネルで起きた交通事故が、殺人の連鎖を招く。
第2章「その話を聞かせてはいけない」
友達のいない少年が目撃した殺人現場は本物か? 偽物か?
第3章「絵の謎に気づいてはいけない」
宗教団体の幹部女性が死体で発見された。先輩刑事は後輩を導き捜査を進めるが。
どの章にも、最後の1ページを捲ると物語ががらりと変貌するトリックが……!
ラストページの後に再読すると物語に隠された〝本当の真相〟が浮かび上がる超絶技巧。
さらに終章「街の平和を信じてはいけない」を読み終えると、これまでの物語すべてがが絡み合い、さらなる〝真実〟に辿り着く大仕掛けが待ち受ける。
「ここ分かった!?」と読み終えたら感想戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説。
ーAmazonより引用
レビュー
この本は、
騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。
という謳い文句ですが、この本は本当に侮ってはいけない。
「本書のご使用法」が手寧に記載されていて、
・まずは各章の物語に集中します
・章末の写真をご覧ください
・隠された真相に気づきましたか?
・「そういうことだったのか!!」
とのことですが、最初の項目から無理だった…解説欲しさに各章ごとにググりました。
っていうところも含めて作者の道尾秀介さんが計算されて作っているようにも思えて、「これだから道尾作品は…(誉め言葉)」と思わずにはいられない。
ネタバレしては「いけない」本のようなので(道尾さんのTwitterより)、ネタバレしないように少しだけ頭の中の情報整理を書いていこうと思います。
ミステリー系、一部ホラー?な内容ですが、グロさはないです。
時系列トリックや叙述トリックが好きな方におすすめです。
第一章では安見夫妻に起こる悲劇について、第二章では珂(カー)少年の恐怖(不思議?)体験について、第三章では宗教団体の幹部である宮下の死の謎を解き明かそうとするが…、終章は1~3章の総まとめ(決して全ての種明かしではない)という構成になっております。終章まで読んでも謎は謎のままという、最初から最後まで読者に考察させていくスタイルです。
とはいえ、第三章~終章や各章末にある写真ページで第一章と第二章の「あの時もしかしてこうだったのか!?」という発見ができるので、読み終わった時の爽快感も得られました。
正直各章でツッコミどころはあるにはあったのですが(矢を人力で刺せるものなのか…とか、その設定は必要だったのか…とか、結局あの登場人物はどうなったの…とか)
登場人物全員に感じる胡散臭さも相まって、「こういう記述はあるけど実際は違うのかもしれない…」と思わずにはいられなかったです。もしかして、妄想(虚言)を現実にあったことかのように言ってるんじゃないか…とか。
読者側がどのようにも考察してしまえる構成の仕方は、まさに圧巻。
この本を読み終わった後、自分の解釈や考察を披露し合いたくなるような本です。
再読すること間違いなしの一冊ですので、ぜひお手に取って「騙された!」感覚を体験してみてください。
まとめ
以上、道尾秀介さんの「いけない」のレビューでした。
以下の方におすすめです。
- 騙される感覚を体験したい方
- 時系列トリック、叙述トリック好きな方
- 考察が好きな方
- グロいのは苦手だけどミステリーが読みたい方
ちなみに私はこれを期に道尾作品を再読したいと思います!