歌野晶午さんは、ハッピーエンドにさよならをしました…
こんにちは。
もちこ。です。
今回は歌野晶午さん著「ハッピーエンドにさよならを」について紹介していきたいと思います。
あらかじめ注意しておきます。
この本、短編集なんですが本当にひとかけらもハッピーエンドないです。
というか、全編通して救いがないです。
それを踏まえた上で色んなバッドエンドが読みたい方は続きをどうぞ!
【目次】
- あらすじ
- 【おねえちゃん】
- 【サクラチル】
- 【天国の兄に一筆啓上】
- 【消された15番】
- 【死面】
- 【防疫】
- 【玉川上死】
- 【殺人休暇】
- 【永遠の契り】
- 【In the lap of the mother】
- 【尊厳、死】
- まとめ
あらすじ
史上初、本格ミステリ大賞2度受賞の偉才が紡ぐ衝撃の結末!
望みどおりの結末なんて、現実ではめったにないと思いませんか? もちろん物語だって……偉才のミステリ作家が仕掛けるブラックユーモアと企みに満ちた奇想天外のアンチ・ハッピーエンドストーリー!
ーAmazonより引用
短編集なのでさくさく読めますが、内容が内容なので、ちょっとグロッキーになる方もいらっしゃるかもしれません。
ハッピーエンドに食傷気味の方におすすめしたい一冊。バッドエンド揃ってますよ!
以下、少しネタバレ含みます。
【おねえちゃん】
両親に対して間違った解釈をしてしまった娘は、ある悲劇を生んでしまう…。
愛はあるのに不器用な両親が、子どもと向き合うタイミング逃したらこんなにすれ違うものなんだな…その事情知ってる叔母さんも一生背負うんだろうなと思うと、なんともいたたまれないお話でした。
【サクラチル】
受験のお話。なんですが、最後にとんでもないどんでん返しがありました。
酒に溺れてDVに走ってしまう旦那と、浪人生の息子を抱える女性。この設定だけでまずつらい。息子が少しでも救いになると思ってたんですけどね…。
(親子ってやっぱり似てしまうものなのかなぁって)
【天国の兄に一筆啓上】
2ページでバッドエンドって凄すぎないですか!?
タイトル通り弟から兄へのお手紙です。死んだ兄が浮かばれないよう…つらい。
【消された15番】
甲子園を目指した少年とその母親のお話。
少年はレギュラーになれなくてもベンチ入りして、「この本にも救いがあるじゃない!」
…なんていう展開はなく。
甲子園行った息子以外のところで事件が起こって、暴走してしまった母親が幸せな結末を自分から手放してしまいました…。
【死面】
やっぱり「入るな」とか「やるな」って言われると、人は行動してしまうものなんですね。
入ったらいけない部屋に自棄になって入ってしまった少年の自業自得エンドなのか、呪われエンドなのか微妙なラインですが、好奇心もほどほどに。
【防疫】
幼稚園からの受験を娘に過剰に強いる母親のお話。もはやDV。
期待を一身に受け、挫折を繰り返し、その期待が突然無くなったとき、自分ならどういう行動を取ってしまうだろうかって思いました。病むかグレそう。
個人的にはこの章が一番読むの辛かったです。
受験生だったり、読んでて辛くなってきたときは無理しないほうが良いかも。
【玉川上死】
よくある高校生の悪ノリが、行き過ぎてしまった結果引き起こした事件。
本人たちは楽しんでるつもりかもしれないけど、周りは迷惑だと思っていたり、いじりといじめは違うよね…と改めて思わざるを得ない。
【殺人休暇】
主人公がある男性に異様に気に入られ、ストーカーされてどんどん精神が追い込まれていく描写がなんとも生々しい。純粋に男性の行動が気持ち悪かったです。
タイトルがタイトルなだけに今回は結末読めた!と思っていたのですが、見事に外れました!
【永遠の契り】
熱々カップルの誕生か!?いやでも今までの流れからすると、裏があるんじゃないの…?
って思ったんですが、裏はなかったです。
が、熱々になる前にちょっと冷静になってたらよかったね…っていう感じのお話でした。
ある意味これが唯一のハッピーエンド感はありました。ハッピーじゃないけど。
【In the lap of the mother】
in the lap of the godsだと「人力の及ばない」「神のみぞ知る」「運次第」っていう意味があるようですが、となるとタイトルの意味は「母の及ばない」「母次第」って感じの意味なのでしょうか?
とりあえず何かにのめりこみすぎてはいけないっていう教訓が私の中で構築されました。
「防疫」もそうだけど、毒親が題材になるのはなかなかメンタルに来ます。
【尊厳、死】
頭の中で主人公のホームレス像を勝手に作ってしまった私も、見て見ぬふりしている人や、無理にでも(主人公の意思関係なく)救ってあげようとしていた女性と同類なのかもしれないと反省しました。価値観の押しつけは良くないですね。結末は衝撃的でした。
まとめ
以上、歌野晶午さんの「ハッピーエンドにさよならを」のレビューでした。
この本は、以下の方におすすめです。
- ハッピーエンドに食傷気味の方
- 短編集が好きな方
- イヤミスを味わいたい方
- 感傷的になりすぎない方
- 差別表現・虐待表現を読んでも平気な方
イヤミスは大丈夫なのですが、虐待表現が得意ではないので、正直私は読んでいてつらくなる場面が多々ありました。
でも、想像がつかないラストがある章もあり純粋にミステリー短編集として楽しめる一冊だと思うので、精神的に安定しているときに一読してみてはいかがでしょうか?